12.12月25日 | ||
“女子力”で伸びるエステ家電 中堅企業が王者パナソニックを脅かす? | ||
「エステ家電」と呼ばれる美顔器やヘッドマッサージ機などが好調な売れ行きをみせている。パナソニックなど大手メーカーが市場を独占するなか、1年前に自社ブランドで参入した中堅の家電販売会社、小泉成器(大阪市)が善戦。低価格品や企画・開発チームに所属する女性社員の日記をホームページ(HP)上で公開するなどユーザーとの距離を縮める独自戦略で存在感をみせ、大手を脅かす地位を確立しつつある。 「美しくなるための食事に興味を持ったので、タニタ社員食堂にインタビューしに行っちゃいました」 . 小泉成器のエステ家電のHPには、企画・開発チームで働く女性社員のこんな日記が掲載されている。HPでは、チームに所属する20?30代の女性社員7人が「美」や「健康」をテーマにした日記を不定期に更新している。「乙女あねご」「よくバリ子」「スイーツ娘」…。HP上で7人はイラストや愛称で紹介されているほか、「パリッとした外見とは正反対の乙女」など性格まで記述され、自然と親近感がわいてくる。 . 健康機器大手、タニタの栄養士に取材したり、肌トラブルを予防する魚の成分を研究する話を紹介したり…と日記には7人それぞれの個性的な1日がつづられている。「エステ家電を使うだけでなく、女性視点で体の中から美しくならないといけないとユーザーに伝えたい」とチーム社員の一人は話す。平成元年に創業の小泉成器は家電販売のほか、独自の商品開発にもつとめ、業界で初めて開発した「蛍光灯付学習机」は人気を集めた。 . 現在、他社製品の販売を含め理美容器具の売り上げ規模は123億円(23年度実績)と、シェア約1割を誇る。しかも、昨年11月には自社ブランドのエステ家電販売にも参入。美顔器や肌の乾燥をケアする「携帯ミスト」などが約1年間で約9万2千台売れ、約3億6千万円の売り上げを計上した。 . 家電ジャーナリストの神原サリーさんは「成功の要因は、HPなどでユーザーに安心感を与えたこと。エステ家電は女性の肌に直接触れるので、作り手の顔が見えると心を許して手に取りやすい」と指摘。小泉成器側も「女性ユーザーの感性に響かせるため、商品の特徴や切り口を明確に伝える姿勢は負けていない」と自信を見せる。 パナソニックなど大手企業を向こうに回し、善戦している理由はもうひとつある。小泉成器の商品は「品質」と「価格」でユーザーの心をつかんでいるのだ。例えば、旅行先に持参しても疲れないように商品の軽量化にこだわる一方、同社商品の大半は1万円未満で販売。家電量販店の関係者は「美顔器をはじめ大手メーカーの理美容家電は1万円超えが多いため、小泉成器の商品は異彩を放っている」と明かす。 . 「エステ家電は高価で持ち運びしにくいイメージが強い。初心者にも気軽に買える商品にしたい」。同社関係者はこう話し、そのためために男性が多い営業や顧客サービスの担当者を対象に、企画・開発チームの女性社員が早朝から勉強会を開くなど、社内での情報共有も徹底している。 . 野村総合研究所によると、国内の理美容家電市場は25年に1500億円以上に達すると予測されている。テレビ販売などが低迷する家電業界にとって“救世主”といえる。ドライヤーや美顔器などを販売するパナソニックはシェア8割を超す商品もあり、エステ家電市場をほぼ独占。しかし、小泉成器をはじめ、今後は小回りの効く柔軟な経営で女性のハートをつかもうとする中堅メーカーが脅威となるおそれもある。 . 理美容家電に詳しい専門家は「今後、中堅企業による理美容家電の参入は増加するはず」と分析。その上で「中堅企業は分野に特化した専門性が高く、大手よりも低価格で、消費者のかゆいところにも手が届く商品を多く出せる可能性は高い」と指摘する。巨額の赤字経営に苦しむパナソニックにとってエステ家電は確実に収益を上げられる分野だったが、市場間競争は今後激しさを増しそうだ。(板東和正) |
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