09.07月14日 | ||
コンプレックスやストレスと向き合えば自分を変えられる――女優 釈由美子さん | ||
デビュー以来12年、順風満帆な芸能生活を歩んできたかに見える釈由美子さん。実はコンプレックスから過激なダイエットと過拒食を繰り返した時期もあったという。そんな釈さんが30歳を前に変わった理由は……。 ■ダイエットから過食と拒食を繰り返した20代 今年4月から2本の連続ドラマに出演した釈由美子さん。“月9”の『婚カツ!』では、婚活に命をかける女性、『LOVE GAME』では難題をクリアしたら1億円という恋愛ゲームの仕掛け人。片やコメディ、片やシリアスと、正反対な役を見事に演じた。毎日撮影続きで、さぞかしストレスフルな毎日だったのではと聞くと、「そうでもないんですよ。『LOVE GAME』では無表情で演じている分、『婚カツ!』では思いきり感情を発散させていて、バランスが取れていました」。 だが、20代の釈さんだったら「コンプレックスとストレスで怖くて2本同時に出演なんてできなかった」と振り返る。 一番ストレスフルだった時期は20代半ば。タレントから女優に転身、映画やドラマの主役オファーも来るようになった頃。うれしい半面、実力が伴っていないという自覚や仕事のプレッシャーに押し潰されそうになった。それを解決するためにダイエットに走った。 「周りの女優さんやモデルさんに比べて、私はなんて太っているんだろうと思っていました。自分に自信が持てなかった。当時は“美しい=やせていること”だと思い込んでいたので、やせてきれいになれば自信がつくはず。芸を磨くよりも、ダイエットだと思ってしまったんです」。 過激なダイエットから拒食と過食を繰り返した。体重が40kgを切っても、「まだやせなくちゃ」と落ち込む日々。 「頑張りすぎる性格」は、自らを追い詰めた。テレビの仕事では「対人関係恐怖症」から現場の空気に過敏になり、「求められている自分」を演じ続けた。そのうち、自分を見失っていき、大きな仕事の前には過呼吸で倒れ、うつの症状も出始めていた。「頑張るほど、ずれていく」自分。それでも消えないコンプレックス、増えるストレス。 「目の前にニンジンをぶら下げた馬みたいでした。どれだけ走ってもゴールにたどり着けない。目標をクリアしても、コンプレックスからすぐに次の目標を立てるから、どんどん完璧主義者になってしまって。癒えるときがなく、常にもがいていました」。 頑張る自分と「どこまで頑張ればいいの?」と悲鳴を上げる自分との葛藤で、常にストレスがマックスだった。 もともと、芸能界入りしたのは「“釈ちゃん”と呼んでもらえるアイドルになりたかった」からだ。でも、「誰かに愛されたい、必要とされたい」と思うあまり、「楽しく仕事をしていても、家に帰るとまた一人になる。素の自分を必要としてくれる人がいない」と涙することもあった。「救ってくれるのはこの人しかいない」と、当時付き合っていた彼に依存していた。 そんな釈さんを変えたのは30歳が見えてきた頃、恋人との別れだった。失恋の痛手の中、「自分の幸せは自分で作るもの」という思いが生まれた。 「30歳になるからこそ、今までの自分をリセットして、ゼロから始めようと思ったんです。中途半端なのも私。無駄にストレスやコンプレックスを抱えるのも私。そんなありのままの自分を受け入れようと。そうじゃないと、また負のスパイラルに引き込まれてしまうって」。 その頃から意識的に自分の体と向き合うようにした。体が喜ぶものを食べ、体を動かして汗を流す気持ちよさを知った。体が元気になると感覚が鋭くなり、自分がどうしたいかがはっきりと分かる。お酒などで気を紛らわせていたことにも、正面から対処できるようになった。 「ゲームをやっているといろんな敵が出てくる。今まではうまくいかなくなるとすぐリセットしたり、誰かに代わってもらっていたけれど、敵は自分で倒すから達成感がある。ストレスやコンプレックスの原因とも逃げずに向き合うから成長できるんだと思うようになりました」。 「ま、いっか」「どうせ私なんて」を言い訳にすることをやめた。人間関係でも求めるばかりだったのが、「自分は何を与えられるか」を考えられるようになった。少し考え方を変えるだけで、前向きになれた。「ぼんやりと半透明だった」20代に比べて、今は視界がはっきりしている。 心境の変化は、仕事にも影響を与えた。今回のドラマの掛け持ちも、自ら手を挙げたという。 「仕事をオファーしてくださる方の期待に応えられるようベストを尽くしたかった。以前は悪女を演じるときは役のイメージで同性の人の反感を買うのではという怖さがストレスになってもいましたが、今はこの役がスパイスになって作品が面白くなればと、演技に集中できるようになりました」。 今春、これまでの悩みと葛藤を経て、心と体とどう向き合っているかをまとめた本『釈ビューティ!』を出版。時に痛くなるような赤裸々な告白。それを乗り越えて、美しくなるために試行錯誤する姿は、7万部のヒットとなり、多くの女性の元気の素になっている。 本で自分をさらけ出せたことも生きる力になった。それでも「“ひざかっくん”されたみたいに」落ち込む日には本屋さんに行く。ふと手に取った本にいいヒントを見つけられることがある。そして、手帳につけている「自分天気予報」を見返すとか。「自分天気予報」とは、その日がハッピーだったら晴れマーク、落ち込んだときは雨マークと、心の状態を天気マークで手帳に書き込んでいくものだ。 「雨マークが続いた後には必ずまた晴れマークがついている。やまない雨はないことが実体験で分かると怖くなくなるんです。30代はまた別の葛藤があると思うけれど、ストレスやコンプレックスとは正々堂々と付き合いたい。自分を受け入れられれば、人は変われると思うんです!」。 |